『評価の基準』プレ講演のご報告 ー「賢者の会」に登壇してー

2017.05.29

出版直前のプレ講演会

 5月28日、著名作家である夏川賀央さんが主催する『賢者の会』に講師としてお招き頂き、5月30日(一部書店では31日)から全国主要書店で発売となる『評価の基準ー正しく評価される人が何気なくやっている小さな習慣』(日本能率協会マネジメントセンター刊)のプレ講演を行いました。

 今回は、私がなぜ本書籍を出すことになったのかという背景についてもお話ししつつ、「今、なぜ評価なのか?」について参加者の方々と一緒に考えながら、「正しく評価される人になるために不可欠な第3の報酬とは何か?」といった本書のエッセンスについても解説しました。また、実際に活用する場合において、自分自身を正しく評価できることがとても重要になることから、自分を限界付けるような思い込みを外すワークも行いました(詳細は賢者の会のブログでもご紹介いただいています。⇒賢者の会ブログ)。

 

     

なぜ、今、評価なのか?

 「日経ビジネスアソシエ(2016年9月号)」によると、1000人のビジネスパーソンを対象に調査した結果、「自分が正当に評価されていない」という悩みが、職場の人間関係において、トップに挙げられました。よくよく考えてみると、「上司に認められない」、「周囲から評価されない」という悩みは、今に始まった話ではなく、古今東西、常に職場の話題となってきたはずです。

 では、なぜ、今、評価なんでしょうか?私は、この問題が職場の人間関係における関心事項としてトップに取り上げられた背景には、職場におけるコミュニケーションにおいて構造的な問題が存在しているからだと分析しています。それは、効率主義の名の下に、メールなどの言語情報だけに頼った職場コミュニケーションが、職場の人間関係に重大な悪影響を与えているということです。

 特に若手層は、SNS世代であり、スマホやゲーム世代で育ってきたため、SNS・ゲーム世代ではない年配の世代と比べて、対面でのリアルコミュニケーションが不得手である可能性が高いと思われます。また、若手でなくても、中堅社員でも、業務に追われるとついついメールに頼って対面でのコミュニケーションを避ける傾向があります。一言で言えば、メールで済むならメールでいいでしょう?ということなのかも知れません。

「メラビアンの法則」から学ぶ

 「メラビアンの法則」をお聞きされたことはあるでしょうか?対人コミュニケーションにおいて、言語情報、聴覚情報、視覚情報から、それぞれ矛盾した情報が与えられた時、人間は、どの情報を優先して判断するかの比率を表した法則です。メラビアンの法則によれば、言語情報が7%、聴覚情報は38%、視覚情報は55%となっています。

 例えば、「ありがとう」という言葉で考えてみましょう。このように言語だけでは、相手がどれだけ、感謝の意を伝えているのか分かりません。ですが、声のトーンや大きさなどの聴覚情報が加わると一気に相手がどの程度、感謝しているかが分かります。さらに、顔の表情や身体の動きなどの視覚情報が加われば、さらに詳しく、感謝の度合いを推し量ることができるでしょう。

 「ありがとう」という言語情報だけでは、本当に感謝しているかどうかすら分かりません。ですが、聴覚と視覚情報が加わることによって、より正確にコミュニケーションが取れるようになるのです。メラビアンの法則で言えば、非言語情報(聴覚38%+視覚55%)の93%が失われているということを意味します。これでは、まともに人とコミュニケーションが取れるはずがないのです。

 

正しく評価される人になるには、自己理解と相手理解が大切

  正しく評価される人になるには、いくつかの大切なポイントがありますが、ここでは自己理解と相手理解についてお伝えします。ここでいう自己理解とは、コミュニケーションにおける自己理解を指します。つまり、「相手とどのような関係を本当は築きたいのか?」ということについて自分の理解を深めると言うことです。どんな相手でも同じように仲良くなる必要はありません。それはあまり意味がありません。自分が、目の前の相手とどういう関係を築いていきたいのか?これについて自己理解を深めることなし、相手と良い関係は築けないのです。

 次に「相手理解」ですが、これは、自分が「相手とどのような関係を築きたいか?」について自分の理解を深めてから、相手について理解を深めていくというものです。相手理解は、先程のメラビアンの法則のとおり、非言語情報(聴覚と視覚情報)の93%をフル活用して、相手とコミュニケーションを取ることが大切です。その際、相手の考えや価値観を「自分の偏見を一切持たずに」傾聴することがとても効果的です。人は、自分のことを理解してほしい、聴いて欲しい生き物なのです。相手の話を心を傾けて聴いてあげるだけで、相手理解は飛躍的に高まります。

 

正しく評価される人になるための「第3の報酬」とは何か?

 詳しくは、5月30日以降に発売予定の『評価の基準』をお読み頂ければと思いますが、これまで会社組織での評価のメルクマール(基準)は、人事評価プロセスを経て、組織から与えられる給与やボーナス等の「金銭的報酬」と出世や昇進といった「地位的報酬」の2つの報酬しかありませんでした。しかし、この二つの報酬が良かったからといって、果たして自分は「正しく評価されている、認められている」と実感することができているでしょうか?

 面白いことに、人事評価が良くても、自分は正しく認められていないと感じている人はかなりいます。その逆に、人事評価は大したことはなくても、周囲から認められ、充実したワークライフを送っている人はいるのです。この違いは一体何なのでしょうか?この本を書こうと思った理由のひとつは、実はこの疑問に対する答えを出したかったからです。そして、この疑問に対する答えが一つでも見つかれば、一人でも多くの方々が、充実したワークライフを送れるようになるはず、と確信したからです。

 そして、私自身の経験と組織心理学的な知見を踏まえて考察した結果、その答えは、「第3の報酬」、即ち「心理的報酬」という概念に集約されました。第3の報酬というのは、私の造語です。「第3の報酬」についての具体的内容は、是非、本書をお読み頂ければと思います。私が、本書の企画をまとめ上げる際に、辿りついた答えが、この「第3の報酬」だったのです。

 

終わりに

 私自身、組織で働いていて、周囲から認められた時とそうでない時があり、実際にかなりの苦労をしたことがあったというのも、この本を書く一つの大きな動機になっています。その意味では、あの時の辛い経験は今に生きていて、今現在、職場の人間関係で苦労されている方、自分の才能を発揮できずに悩んでいる方、どのように人材を育てていったらいいのか迷われている方の気持ちは、十分に理解できます。

 いくら努力しても、専門知識を身につけても、業務経験を積んでも、「正しく評価されない」なら、本当に何のために仕事をしているのか分かりません。実は、ちょっとした「差」が、評価を左右するのです。そのちょっとした差とは何なのか?本書をお読み頂ければ、恐らくご参考になるはずです。

 過労死などの社会問題を皮切りに、我が国政府は、「働き方改革」を推し進めていますが、制度的な枠組みだけでは限界があると思っています。私は、人間理解なき改革は機能しないだろうと考えています。その意味で、本書は、人間理解に基づいた職場改革の本でもあり、新しいだけでなく、現場で役立つ効果的な視点を取り入れた内容となっています。

 本書を手にされた方々が、一人でも多く、自信にあふれ、従事したワークライフを送ってくださるよう、心から願っています。