1on1が機能するための前提条件とは?『月間人事マネジメント12月号』に寄稿

人事系の専門誌として全国の中堅・中小企業より強い支持を得ている『月間人事マネジメント』からのご依頼を受け、「組織に根付く1on1の進め方」というテーマで全6回の連載記事を執筆中!今回は第2回目の寄稿ということで「1on1が機能するための前提条件」について解説しています。
 
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掲載記事の本文

今回の記事では、1on1が効果を発揮するための重要な前提条件について触れています。今、グーグルやヤフーをはじめとする一流企業の多くのが1on1を導入していますが、形だけ1on1を導入しても上手くいきません。

1on1とは1対1のコーチングである

1on1は単なる1対1の人事面接や打ち合わせとは大きく異なる、という点については前回説明したとおりです。端的に言えば、1on1とは「1対1のコーチング」です。コーチングはコミュニケーション手法の一種ですが、その特性から「自発的行動を促す」、「創造性を発揮させる」、「新しい視点を与える」、「思考力を高める」、「パフォーマンスを高める」、「目標達成を容易にする」、「人間関係を豊かにする」、「心の安定を高める」などといった様々な効果があります。

それらの効果が期待されるゆえ、グーグルでは「マネージャーの仕事は?」と聞くと、「1on1が50%。あとは評価」との返事が返ってきたとの話もあり、さらなる成長を求める企業において、1on1が企業マネジメントのスタンダードとなる日はそう遠くないでしょう。

それほどまでにここ最近、企業で重要視されつつある1on1ですが、実は1on1が効果を発揮するにはいくつかの大切な「前提条件」があります。今回はその中で特に大切な5つの前提条件についてお伝えしたいと思います。

1on1が機能する5つの前提条件

 

まず最初の前提条件は「相手の可能性を信じる」です。このことを私が学んだコーアクティブコーチングでは「NCRW」と呼んだりしますが、NCRWとはNaturally Creative Resourceful and Wholeの略で「人はもともと創造力と才知にあふれ、欠けることのない存在である」といった考え方に基づくものです。

例えば、部下に対して「こいつはダメだな」と可能性を否定した瞬間に部下の可能性を引き出すことは不可能になります。たとえそのことを言葉に出さなかったとしても、部下に対してネガティブなフィルターをかけてしまっているので、部下とのコミュニケーションが発展的な方向に向かうことはありません。それゆえ、コーチ側に立つ上司は、どんな場合においても部下の可能性を信じ続けるという立場を取ることが極めて大切です。

第二に「アドバイスはしない」です。これはコーチングの原理原則でもありますが、コーチングはティーチングとは異なり、教えたり、アドバイスしたりはしません。あくまで「自分で考え、自発的に行動すること」を促していくのです。このことによって、部下は主体性を発揮しやすくなり、その結果、仕事のパフォーマンス向上にも繋がっていきます。もし、アドバイスが必要な場合でも、部下が求めてきた場合のみ、参考情報として提供するにとどめ、アドバイスに従うかどうかは本人の意思に任せることが大切です。

第三の前提条件は「結果よりもプロセス重視」です。結果を生むのはプロセスの積み重ねです。ビジネスで大切なのは、成功確率を上げるために「正しいプロセス」を持てるかどうかです。間違ったプロセスでは、期待した成果を得ることはできません。結果と言うのはあくまで「定点観測」に過ぎません。プロセス(行動)は変えられますが、結果は変えられないのです。だからこそ、プロセスに着目してフィードバックする。部下の成長を本気で願っているのなら、結果だけで評価判断したりするのではなく、長期的視野でプロセスの改善(行動変容)を促すことが大切なのです。

第四は「相手をジャッジしない」です。人は通常、相手の話していることに対して自分の価値基準を通じて解釈し、正しいとか正しくないとかを判断しています。つまり、自分に意識が向いた聞き方をしているわけですが、これでは相手に対する理解は不十分、あるいは誤解してしまう可能性すらあるので、相手に意識を向けた聞き方をする必要があります。

第五は「パートナーシップ関係」です。職場では、上司と部下という「上下関係」が前提として成り立っていると思いますが、1on1の場では上下関係ではなく、対等な水平関係(パートナーシップ関係)が意図的に作ることが大切です。対等なパートナーシップ関係を意図的に構築することで、部下のみならず上司も自己開示しやすくやり、ラポール(信頼関係)が深まります。

1on1を定着させるには時間をじっくりかけること

そのほか、「事柄ではなく人にフォーカスする」、「自責のポジションを取る」、「意図的な協働関係を構築する」などといった前提条件もありますが、いきなり全ての前提条件を満たしていくことは難しいので、一つづつ前提条件をクリアしていくことを心掛けてもらえばよいかと思います。忘れてはならないことは、形だけの1on1は機能しないということ。前提条件を一つ一つ丁寧に満たしていきながら、1on1を継続的に実践していくことが大切です。

「ローマは一日にしてならず」と言われるように、人の成長には時間がかかります。それゆえ、1on1を組織内に定着させ、効果を実感できるようになるまでには数カ月から1年以上の時間を要することもあるでしょう。

今年に入ってからは、感染症コロナの影響でリアルでのコミュニケーションの場が格段に減ってしまいましたが、ZOOMなどのオンラインコミュニケーションツールを活用すれば、場所を超えて時間効率的に1on1を行うこともできます。むしろ、このような状況だからこそ、人とのつながりや組織の一体感を醸成するために1on1を積極的に導入すべきではないでしょうか?

コロナに限らず、激動の世界情勢の中で、今後さらなる困難や未知の環境に対応していかなくてはなりません。指示命令どおりでしか動かない指示待ち人間では、そんな状況を乗り越えることはできません。自ら考え自ら行動できる、自発的行動力をもった人材こそが逆境を乗り越え、ブレークスルーを起こしてくれることでしょう。

1on1の効果的な社内導入については、弊著『聞く力こそがリーダーの武器である』(フォレスト出版)でもお伝えしていますので、是非ご一読ください。

 

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