なぜ、「聞く力」がリーダーにとって最も重要なのか?
前作となる『聞く力こそが最強の武器である』(フォレスト出版)でもお伝えしていますが、私はこれまで各国の政府関係者、大小様々な企業、自治体、大学、NGO等のリーダーやキーパーソンといった第一線級の方々と一緒に仕事をしてきた中で、
「リーダーにとって何が最も重要なスキルか?」
と問いを立てた時、それはやはり「聞く力」である、と確信しています。
ではなぜリーダーにとって「聞く力」が最も重要なスキルなのかと言えば、詳細は本文に譲るとして、「聞く力」とは「人を理解する力」だからです。
聞くには「二つの視点」の視点がある
上司と部下の問題、社長と社員の問題、チームがまとまらない問題等々、これら会社組織で起こる数々の人間関係の問題は、すべて「人間に対する理解不足が原因」です。
上司が部下のことを聞かない、経営幹部が現場の話を聞かない。ありとあらゆるところで、コミュニケーションが崩壊しています。
「いや、そんなことはない。私は部下の話をちゃんと聞いている」と反論される方もいらっしゃるかもしれません。
実は、聞くには「二つの視点」があります。一つは「相手の言葉を聞く」という視点。もう一つは「相手の感情(心)を聞く」という視点です。
部下の話を聞けているという方は、部下の話す言葉は理解しているのかもしれませんが、部下の気持ち(心)までは理解できていません。
部下に対し、どれだけロジカルに言葉を尽くして伝えたとしても、部下に対して理解しようという思いや共感がなければ、部下は動いてくれません。
「人は論理ではなく、感情で動く」というのは手垢のついた言葉ですが、まさにその通り。多数の人々を率いるリーダーであるからこそ、なおさら人を理解するための「聞く力」が不可欠なのです。
部下が動いてくれない本当の理由
部下が動かないと嘆く上司は、実は「部下とのラポール」が欠けています。ラポールとは、シンプルに言うと信頼関係ですが、要するに部下のことをちゃんと聞けていないのです。
部下のことを聞けていなければ、部下のことを理解することはできません。理解できなければ信頼関係はできません。信頼関係ができてなければ、上司の言葉は部下の心に響かないのです。
人は自分のことを理解してもらった時、相手と心を通わすことができます。これが心理的安全性を高め、信頼関係のベースとなります。部下とのラポールが構築されてはじめて、部下はみずから動いてくれるようになるのです。
本当のコミュニケーション力とは?
昨今、どんな企業においても、「コミュニケーション力は最も重要なスキル」と言われながら、誤解している人が非常に多く、また表面的な対応しかできていないのが現状です。
コミュニケーションスキルを単なるプレゼンスキルやロジカルシンキングのことだと勘違いし、肝心の「魂」の部分が抜け落ちてしまっているのです。
本当のコミュニケーション力とは、「心と心が通じ合う意思疎通ができること」を言います。相手の気持ちを聞くことができるからこそ、心と心を通わすことができる。
本当のコミュニケーション力を身につければ、上司と部下との関係にとどまらず、ビジネスで最も大切な「信頼関係という最高の資産」を築くことができるのです。
「話すは技量、聞くは器」
部下の成長は、上司の器の大きさに比例します。部下の成長を願うのであれば、己の「器」を磨き、器を大きくしていくことが大切です。
本書を手にされた方々が、「聞く力」という最強の武器を手にされて、世の中にさらなる貢献を果たされたなら、私としてこれ以上嬉しいことはありません。